前年度の基礎研究で、三角柱型結晶素子を用いることにより単一シンチレーション結晶素子で8層分のDOI検出が可能であることを確認した。本年度は、結晶素子の識別の精度が高まるような検出器パラメータの条件の検討と受光素子の検討を行った。検出器パラメータとして、各結晶間の物質を反射材、空気、光学接着剤、半透明フィルムの中から選択することで、シンチレーション光の受光素子への分布の微調整を行った。放射線を検出した結晶素子を受光素子信号の位置演算で特定するため、結晶素子ごとに受光素子信号の分布を変え1対1対応させることで結晶素子ごとに演算結果が異なり識別が可能となる。シンチレーション光の広がりについて、反射材では光の広がりが遮断されることになる。他の3つの物質については、屈折率が結晶に近い光学接着剤の場合最も光が通過しやすく、半透明フィルム、空気の順で通過しにくくなる。これらの検討を踏まえた結果での学会発表を行った。 受光素子について、近年小型で軽量な半導体受光素子が急速に普及し、国際学会でもPET検出器などへの応用の研究が多く見られた。浜松ホトニクス社製マルチピクセルフォトンカウンター(MPPC)も半導体受光素子であり、本研究でその検討を行った。MPPCには、前年度用いた受光素子(256チャンネル位置弁別型光電子増倍管)とほぼ同じサンプリング間隔を保つことができるよう受光面が3×3mmのもの、使用するシンチレータであるLGSOの発光量に適するものという条件よりMPPC S10931-050Pを選択した。基礎研究で、温度とバイアス電圧へ依存が高い、受光量に制限があるというMPPCの問題を確認するとともに、それらの制御が可能な系において1/10以下のバイアス電圧で前回用いた受光素子に劣らない性能を持つことを確認した。MPPCは小型で個々に独立しているため、シンチレータへの結合の配置も個数も自由であり、それにより検出器の大きさ、形状も適宜選ぶことが可能となる。
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