本年度は、ボスファチジルセリン(PS)を殻成分に含有する微小気泡(Sonazoid)の表面にAnnexin V、アビジンービオチン結合を介して抗体を接着できるか否かについて検討した。Annexin VはCa^<2+>依存的にPSを認識する分子として知られているため、始めにCa^<2+>添加がSonazoidに影響を及ぼすか否かについて検討した。その結果、Ca^<2+>を添加することでSonazoid気泡は安定性を失い、明らかな気泡数の減少が観察された。これは、陰性に帯電し安定しているSonazoid表面がCa^<2+>により電気的に中和されることで気泡としての安定性を失った結果だと考えられる。そこで、気泡数の減少が最低限になるようなCa^<2+>濃度を実験的に見出し、抗体を接着させる実験へと移行した。Annexin V、アビジンービオチン結合を仲介させることにより、Sonazoidの殻表面に抗体を接着させることが可能であった。しかしながら、SonazoidとAnnexin Vの結合保持のためにはCa^<2+>が必要不可欠であり、その結果出来上がった分子標的気泡の気泡数は非常に少数であった。これらの結果より、PSとCa^<2+>依存的に結合するAnnexin VはSonazoidを基盤とした分子標的気泡の作成には不適である可能性が示唆された。そこで、Ca^<2+>非依存的にPSと特異的に結合する分子であるLactadherinに着目し、Lactadherinを用いた分子標的気泡の作成に着手している。予備的検討の結果から、Lactadherinを介した令子標的気泡の作成可能性が示唆された。今後in vitroやin vivoにおける検討へ移行していく予定である。
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