研究概要 |
呼吸不全患者・廃用症候群に対する腹直筋電気刺激の効果 立位支持や歩行の安定のためには、下肢筋力のみならず体幹筋力が重要である。そこで今回われわれは、介護度3以上の虚弱患者に対して、下肢電気刺激に加えて腹筋電気刺激を行い、下肢・体幹筋力と日常生活動作の評価を行った。某療養型病院入院中の長期臥床患者(平均年齢87歳、要介護3~5、FIM86)に対して、腹筋と下肢に対する電気刺激療法を施行した。電気刺激箇所は、腹直筋、腹斜筋、大腿直筋、下腿三頭筋とした。刺激周波数は10Hzで、1日1時間、週7日間・5週間施行した。刺激強度は患者本人が耐えられる最大強度とした。電気刺激の効果を判定するため、ハンドヘルドダイナモメータ(HDD)を用いて下肢筋力を評価した。またスパイロメトリーを用いて肺活量(VC)、1秒量(FEV1)、吸気週末圧(MIP),呼気週末圧(MEP),最大呼気流気量(PEFR)の測定を行い、呼吸器能に合わせて間接的に腹筋筋力を評価した。さらに日常生活動作の評価目的でFIMを測定した。その結果、電気刺激療法により、下肢筋力、VC、FEV、MEPは改善した。しかし、MIPとPEFR,FIMは電気刺激前後で改善しなかった。 したがって長期臥床患者に対する腹筋・下肢骨格筋電気刺激療法は、呼吸器機能・下肢・体幹筋力向上に有効である可能性が示唆された。このデータは、平成23年の日本リハビリテーション学会雑誌などに発表予定である。
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