新しいリハビリテーションの手法や技術が普及するための支援方法について「イノベーション決定過程の段階モデル」を基に示唆を得ることが本研究全体の目的である。具体的には、1970年代に開発され、以後有用性が示されたものの、日本においては普及がみられなかった言語リハビリテーションのシステム「動的パラトグラフィ」について、黎明期には存在しなかった情報通信技術・情報伝達方法(Web、メール等)を利用した普及促進について検討する。 最終年度の今年度は、英国での普及がめざましい動的パラトグラフィ「WinEPG」について、日本国内のユーザーを対象に行なったセットアップや操作方法習得の支援及び、新しいリハビリテーションの手法や技術が普及するための要因について、前年度までの実践結果を基に総合的に考察した。その結果、日本国内においてWinEPGを普及させるためには、「イノベーション決定過程の段階モデル」における「II.説得」段階で鍵となる「イノベーションの主観的特性」を変化させる必要があると示唆された。具体的には、ユーザーに直接会っての支援や、メール等の情報通信技術を活用した支援を行なっても、ユーザーにとってWinEPGの複雑性は高く、試行可能性は低いという主観的特性が払拭できず、その結果としてWinEPGが本来有する相対的利点や両立可能性、観察可能性についても低い評価を受けてしまうことから、使用継続に至ることが困難であると考察された。
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