早産低出生体重児の比率は増加傾向にあり,NICUに入退院する全ての早産低出生体重児のQOLを考えさせる契機になった.また近年,発達に問題がないとされてきた早産低出生体重児の中にも,3歳以降の発達検査において早産低出生体重児に特徴的な発達が認められることが指摘されており,より丁寧な発達アセスメントと発達支援の必要性が示唆される。 早産低出生体重児を対象とした神経心理学的発達研究分野では,乳児の運動には,手足を含めた全身の複雑な自発運動(General movement; 以下GM)が見られ,このGMの複雑さの有無によって脳の発達障害を診断できるという報告がある。さらにGM診断の結果と発達障害の確定診断との関係を明らかにした調査では,陰性予測値は高いものの,陽性予測値は低いという報告がある(木原他,2008)。つまり確定診断されていないような発達の境界例の子どもの発達予後についても,GM診断ではスクリーニングしている可能性が考えられる。 発達障害の診断のない児で,これまでにGMを記録することのできた子ども37例のうち,16例に質問紙による追跡調査の協力を得た。さらに協力が得られた子どもの中で気になるGMを示した3例について,3才時点のフォローアップ検診の中で詳細な発達像を把握するための発達検査が実施された。それぞれの子どものDQは79~82のボーダーラインを示したが,出生週数をもとに算出した修正月齢を用いると,全ての子どものDQは正常範囲内であった。しかしプロフィールの詳細を確認すると,特に認知・適応課題において,極端に出来る課題と通過できない課題が1歳以上の幅をもって混在しており,アンバランスさが見られる点で共通していた。この結果は,NICUへの子どもの入院を経験した家族に対する質問紙調査の結果とも照らし合わせて,低出生体重児の発達的な特徴に関する考察をした。
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