本研究課題は、パーキンソン病、本態性振戦疾患をはじめとする各種振戦疾患患者の日常生活における食事や書字の際に起きるふるえ(振戦)を、加速度計を用いて計測解析し客観的情報を提示する事により、自分自身で抑制するためのバイオフィードバック訓練装置と訓練方法を確立することを目的としている。 パーキンソン病の治療には、定位脳手術や脳深部刺激療法等の手術療法、ドパミン作動薬や抗コリン薬等の薬物療法、また本態性振戦疾患の治療にはベータ遮断薬等の薬物療法が用いられている。しかしながら、患者の日常的な振戦をセルフコントロールする事も重要であり、バイオフィードバック療法が注目されている。バイオフィードバックとは被験者が普段気づくことのない生理情報を工学的機器の助けを借りて知ることにより、その制御方法を被験者自身で習得するという学習方法である。 平成22年度は、前年度に発見された操作・集録プログラムの再構築を行い、計測された振戦加速度振幅に対応する音圧バイオフィードバックシステムを作成した。その後動作確認を行っていたが、加速度センサーの故障が生じ計測ができなくなったため原因を調査した。調査の結果、加速度センサーの仕様に不具合があることが分かり、センサー周辺回路の変更を検討した。 本研究課題により、振戦疾患患者の振戦を計測する加速度計、加速度信号を処理する信号収録機器および被験者へのバイオフィードバック信号呈示用のヘッドホンを一つの筐体に収納した易操作式バイオフィードバック訓練システムが構築できた。機器を構築して初めてセンサーの問題等が明らかとなったため、信号集録と処理の仕様変更に対応した細かな修正を要するが、今後は振戦疾患患者の運動課題遂行時における振戦抑制バイオフィードバック訓練に向けて研究を継続する予定である。
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