| 研究概要 |
本研究の目的は,運動イメージ訓練についてより施行しやすく効果の大きい方法を考案することである.本研究では,液晶モニタに映る「上肢が動く映像」を自分(被験者)の上肢に重ねた状態で運動イメージを行ってもらい,運動イメージ訓練の効果が向上するかどうかを検討する(実験A).また,このような新しい運動イメージ訓練が,運動野の興奮性をより増大させるかどうかを調べる(実験B).
平成21年度においては主として実験Bの視覚刺激提示方法の検討と予備的な計測を行った.
本研究では,運動する上肢の映像を,被験者本人の上肢に重ね合わせて写し,運動する肢を自分の肢であるかのように錯覚させることが肝要である.当初計画の段階では,視覚刺激の提示方法として液晶モニタを利用する予定であったが,実際にこれを使用しながら脳磁図計測を行ったところ,モニタから無視できないレベルの磁場ノイズが生じて脳磁図の計測が難しいことが明らかとなった.これをソフトウェア的に除去するため各種フィルタを試したが不十分であった.そのため,視覚刺激の提示方法を小型液晶プロジェクタを使用する方式に変更し,磁場ノイズの大きさを計測したところ,液晶モニタに比べかなり小さいレベルのノイズに抑えられることが明らかとなった.平成22年度ではこの方式を用いて本実験を行う予定である.
なお,液晶モニタは大きな磁場ノイズを生じるが,このノイズは脳波計測にはそれほど大きな影響を与えない.脳磁場と同時に計測している脳波データを若干名で検討したところ,「運動を観察しながら行う運動イメージ」の際の脳活動は,通常の運動イメージと,通常の運動観察の際の脳活動の単純な加算にはなっていない可能性を示唆する結果を得た(第32回日本神経科学大会にて報告済).
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