中枢性麻痺に伴う関節拘縮の発生機序の解明ならびにその予防と治療の確立は、リハビリテーション医学において喫緊の課題である。拘縮の予防と治療のために、伸張運動と物理療法が臨床において積極的に行われている。それらの効果は、症状や重症度、方法や強度、物理療法機器の性能などにより影響を受けることもあり、有効性の証明には至っていない。本研究課題の目的は、拘縮の発生につながる変化を予防ならびに改善するための伸張運動と物理療法の至適な条件を絞り込むことで、中枢性麻痺に伴う拘縮の有効な治療条件を探索し、その治療基盤を確立することである。当該年度では伸張連動の治療条件を確定した。 対象を正常対照群、脊髄損傷群、脊髄損傷後に伸張運動を行う群の3群に分け、強度を高負荷と低負何の2条件、持続時間を持続的伸張運動(長時間・短時間)と間欠的伸張運動の3条件、合わせて6条件の伸張運動を検討した。その結果、中枢性麻痺に伴う関節可動域制限の改善には、長時間持続的伸張運動、間欠的伸張運動、短時間持続的伸張運動の順に有効であった。また、強度は低負何よりも高負荷が有効であった。さらに、これらの伸張運動は、関節可動域制限の責任病巣としての筋の変性の改善よりも、関節内構造の変性の改善に対して効果的であった。 これらの研究成果を踏まえて、筋と関節内構造に生じた変化を、組織化学的、生化学的、生理学的に分析し、治療効果の詳細な判定を進めている。次年度以降、確定した伸張運動に物理療法を併用することで、有効な予防と改善の条件を検討する。
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