研究概要 |
理解していない用語の文章を読み上げる際には棒読みになるという現象がしばしば経験される。そこで、逆に用語の理解度の指標として利用するため、読み上げにおける棒読み現象の特徴の記述を試みる。事前に、専門用語の略語と一般用語の説明文を読み上げてもらい、その読み上げ音声を分析対象とした。東京もしくは神奈川県出身の言語聴覚士(以後ST)8名(男性2名,女性6名)、学生9名(男性5名,女性4名)に静穏な環境下で読み上げを依頼し、8語をSTの専門用語と8語の一般用語の計16語について読み上げてもらい収録した音声データを用いて以下の分析結果を得た。また、収録後参加者17名全員に対し、16語それぞれの略語に対する理解度と使用頻度についてアンケート調査を実施した。 音声データをST群と学生群の群間で、読み上げ後のアンケートにおける理解度に最も差のあった略語「ST」について分析を進めた。棒読みとの印象が強い読み上げには、言いよどみもしくは読み上げ文の読み返しによるポーズが観察された。こういったポーズは句読点や文の意味構造の区切り目とは無関係に不自然な位置に観られたが、前後の読み上げ音声の読み上げ速度には顕著な変化が観られなかった。このようなポーズの発生が棒読み指標としての可能性が示された。今後は不自然なポーズが発生する前後の韻律情報について分析を進め、「棒読み現象」における特徴的な要素を検討し、理解指標としての精度を高める。
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