研究概要 |
平成21年度には,健常者を対象としたリサージュ図形の健常モデル(グランドアベレージ)作成および検討を実施した.健常者79名(男性:65名,女性:14名,体重:45.7±17.2,身長:166.1±7.2,体重:63.4±9.2)を対象として,三次元トレッドミル歩行分析を実施した.トレッドミル歩行速度は時速5Kmとした.使用機器は,KinemaTracer^(R)(キッセイコムテック株式会社製)とした,また,マーカは,対象者の耳垂,肩峰,腸骨稜,股関節,膝関節,足関節,第5中足骨骨頭とした. リサージュ図形の健常者グランドアベレージは,対象者を50歳未満(非高齢者群)と50歳以上(高齢者群)に群別し作成した.対象毎の各マーカの運動軌跡は歩行周期毎に切り出し,平均歩行周期時間にて時間軸の正規化を行い,加算平均処理を施した.これらを用いて,健常者2群の平均値を算出し,グランドアベレージのデータとした.また,各マーカの側方成分と前後成分のみ各群で算出した平均の重心位置からの相対的距離に換算した. 考案した上記の手法によって,各リサージュ図形の運動パターンに限らず,リサージュ図形毎の相対的な関係性を表すことができ,歩行の全体像をイメージすることができた.2群のグランドアベレージを視診にて比較すると,高齢者群は非高齢者群に比べ,左右の足関節の距離が短く,膝・足関節,第5中足骨骨頭の矢状面上の運動が小さかった.これらは,先行研究で報告されている高齢者の歩行の特徴である歩隔の減少と下肢運動の減少(歩幅の減少,足部のクリアランス減少)と一致したものであった. 今回,考案した健常者グランドアベレージは,高齢者の歩行パターンを表しており,今後歩行を概観する指標になるとともに,これまで存在しなかった歩行の「標準モデル」として,異常歩行分析の定量的分析の基盤になると考えられた.
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