研究概要 |
本研究では,平成23および24年度にわたり,安定期の片麻痺患者に対するリサージュ図形分析の信頼性および妥当性の検討を予定している。平成23年度は、予備的検討として健常者39名のデータで作成した各身体部位リサージュ図形の定量的指標をもとに,片麻痺者30名を対象に,片麻痺者の3つの典型的異常歩行(分回し歩行,遊脚期骨盤挙上,前足部接地)の重症度指標の妥当性を検討した。 妥当性の検討には,作成した各症例の指標値と,理学療法士4名(臨床経験年数8~34年)の視診による異常歩行重症度(5段階)とを比較した。なお,評価の信頼性の確保は,片麻痺者の歩行訓練経験の多い理学療法士を選定し,各異常歩行の定義の解釈の統一を行った上で評価を実施した。指標値と視診所見の間には有意な相関(Spearman順位相関係数,分回し歩行:-0.70,遊脚期骨盤挙上:-0.83,前足部接地:-0.92,p<0.01)を認められた。また,各指標において,数例の乖離例も認めた。今回,リサージュ図形のデータを用いて作成した指標値は,臨床で活用している視診の手法を直接反映したものであり,異常歩行パターンを客観的かつ定量的指標になると期待できた。 今回の研究では,健常者のデータが39名と少数であった。来年度は,平成21~22年までに蓄積した健常者79名のデータを用いて指標値の標準値を作成するとともに,他の異常歩行パターン定量化の指標の作成に取り組む予定である。
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