3次救命救急施設では、意識障害を起こした患者に対して早い段階からのリハビリテーション(急性期リハビリテーション)が行われる。 意識障害は、機能障害を起こしている脳の部位によって覚醒の障害、認知の障害、そしてその両方の障害という3種類に分類することができると考えられている。一方、意識障害を起こした急性期の患者に対して行われるリハビリテーションは、覚醒の障害に対するリハビリテーションが、認知の障害に対するリハビリテーションよりも優先的に遂行されることが多いという現状がある。その理由として、認知の障害に対するリハビリテーションには十分な評定尺度が存在せず、また機能回復を目指せる十分なツールが確立されていないことがあげられる。覚醒の障害と同様、認知の障害についてもリハビリテーションは、社会復帰した際の患者にとって重要であり、早期からの対応が望まれる。そこで「急性期リハビリテーションにおける認知機能障害の評定尺度の開発」と「急性期リハビリテーションにおいて使用する認知機能回復のためのツールの開発」を目的とした研究を行うこととした。 初年度における達成目標は、急性期リハビリテーションにおいて使用する認知の障害の評価尺度と、認知機能回復のためのツールに採用する視覚刺激の決定であった。現段階では、モニター上を移動する視覚刺激を追跡する際の眼球運動を測定することで認知の障害を評価するという方向で研究がすすめられている。 本年度は、上記の刺激を用いた尺度とツールの開発が目標となる。この際に、尺度、ツールの信頼性、そして妥当性を検証することは大切なことである。医師の診断内容、看護師や理学療法士からのフィードバック、他の判断尺度やツールとの照合が重要な課題となる。特に前年度末に購入した頭部近赤外分光計測装置の有効な利用も目指したい。
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