本研究は、廃用性に萎縮した骨格筋における萎縮・収縮力の回復に、機械刺激が有効であることを細胞・分子レベルで明らかにすること目的とする。動物モデルに加え、培養骨格筋細胞を用いることで、個体・組織における現象のみならず、刺激に対する細胞・分子の応答メカニズム(細胞内シグナル)をも解明することに挑む。 本年度は、既に使用経験のあったモデル動物である除神経ラットの萎縮筋を用いて、組織化学及び生化学の検出系を確立した。主に筋組織の抗体組織染色、筋断面積の測定、筋組織の全抽出物に関する電気泳動、ウェスタンブロットを実施した。除神経後の筋に対して他動的伸張運動を行うと、萎縮が緩和され、この緩和に細胞内シグナル経路の1つであるPI3K/Akt/TOR経路が関連することが分かった。 さらに培養骨格筋細胞に他動的伸張刺激を加える実験系を確立した。その細胞に関する細胞染色などの細胞生物学的検出系や、前述同様の生化学系も確立した。本系で、トリ胸筋初代培養による筋管細胞(筋線維様細胞)が肥大し、この肥大にもPI3K/Akt/TOR経路が関連することが分かった。 次年度以降は、新たなモデル動物として尾部懸垂マウスを確立する予定である。非荷重による後肢筋の萎縮である為、廃用性筋萎縮のモデルとして除神経モデルより適切である。また一般に遺伝子解析という点では、ラットよりマウスの方が有利とされる。この点を勘案して動物種を変更する。筋萎縮完成後、後肢へ再荷重させることで、萎縮筋に機械刺激を加える。 そのマウス下肢筋(長指伸筋、ヒラメ筋など)にっいて、電気刺激による最大収縮力を測定し、確立済みの組織化学、生化学を実施することで、萎縮・収縮力の回復と再荷重の関連や、関与する細胞内シグナルを解明する。さらに、その細胞内シグナルの機械刺激に対する応答性を、培養細胞を用いて解明する。
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