研究概要 |
目的:上肢による空間識別ならびに手指による接触識別を用いた知覚運動学習課題が脳卒中片麻痺の上肢機能回復に対して有効に働くかを明らかにすること.そして,その課題時の脳活動に関して脳機能イメージング装置を用いて分析すること.対象:入院加療中の脳卒中片麻痺患者21名.その対象を介入群11名,対照群10名に無作為に振り分けた.方法:介入群は長さや方向の異なる線の軌跡を他動的な上肢運動によって識別する課題,表面の粗さが異なるサンドペーパーの違いを他動的な手指接触によって識別する課題を遂行した.対照群は他動的な上肢運動,ならびに識別を求めないサンドペーパーへの手指接触を遂行した.これらの課題は一般的な医学的リハビリテーションに追加する形で実施した.課題は10日間継続施行した.アウトカムとしてFugl-Meyer Assessment,10秒テスト,手指2点識別覚を用いた.課題時の脳活動は近赤外光イメージング装置(fNIRS)を用いて調べた.結果:介入群では有意な学習効果を認め,その効果に伴い有意な2点識別覚の減少,10秒テストの増加,Fugl-Meyer Assessmentスコアの上昇が認められた.一方,対照群ではFugl-Meyer Assessmentスコアのみ有意な上昇がみられた.介入群は対照群に比べFugl-Meyer Assessmentスコアの効果量(effect size)が有意に大きかった.介入群では,課題時において,前頭葉および頭頂葉領域の酸素化ヘモグロビン濃度長に有意な増加を認めた.一方,対照群では課題時において著明な脳活動の変化はみられなかった.結論:これらの結果により,脳卒中片麻痺の上肢機能回復に対して知覚運動学習課題が効果的に作用することが示唆された.また,その課題時において前頭葉および頭頂葉の活性化が認められることが明らかになった.
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