神戸大学大学院保健学研究科、同大学院工学研究科と連携して本年度は以下4点を実施した。(1)自閉症の言語訓練に関する臨床経験を3年以上有する言語聴覚士(ST)10名を対象に、自閉症児と定型発達児の音声識別実験を行った。自閉症児30名と定型発達児54名に対して絵カード50枚の名称課題を実施し、収録した音声から単語ごとに切り出して単語音声データベースを作成した。STは単語音声データベースよりランダムに選ばれた10種の単語(各10語)、計100語について自閉症児か定型発達児かを判定した。回答パターンは自閉症児データを自閉症児と判定した場合(正答1)および定型発達児と判定した場合(誤答1)、定型発達児データを定型発達児と判定した場合(正答2)および自閉症児と判定した場合(誤答2)の4つに分けて比較した。その結果、正答率は.69であった。回答パターンは正答2(.79)が正答1(.54)と比べて有意に大きく(p<.01)、誤答1(.46)が誤答2(.21)と比べて有意に大きかったが(p<.01)、正答1と誤答1の間には有意差がなかった。(2)識別器による自閉症児と定型発達児の音声識別プログラムを開発した。ピッチに関する24次元の特徴量から識別器が有効な特徴量を自動で選択した。その結果、正答率は.76であった。(3)人間と機器による識別精度を比較するため、正答率に加え、F値=2×再現率×適合率/(再現率+適合率)を検討した。F値は人間が.59、機器が.73となり、正答率もF値も機器の方が人間よりも高かった。これにより、自閉症児の音声識別における機器の有効性が示された。(4)第114回日本小児科学会(8月、東京)、第50回日本小児神経学会近畿地方会(10月、大阪)にて口頭発表を行った。併せて海外ジャーナルへ投稿した。また、平成24年度には第115回日本小児科学会(4月、福岡)、第59回小児保健協会(9月、岡山)、第108回日本小児精神神経学会(11月、神戸)での発表を予定している。
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