MRIによる脳内機能的結合性評価のリハビリテーション科学への応用を目指し、安静状態下での機能的結合性の特性に関する基礎的検討として、脳梁完全欠損者および脳梁部分欠損者を対象とし、機能的結合性と神経線維連絡の関係に着目した研究を行った。脳梁完全欠損者、脳梁部分欠損者とも、脳梁が欠損している以外に脳構造の解剖学的異常は認められず、また、両名とも、知的機能は正常範囲内にあり、社会活動にも特に支障をきたさない状態であった。左右大脳半球間に機能的結合性が認められたことは平成22年度に実施した実験により明らかとなっていたが、年齢・性別をマッチさせた健常群データと脳梁欠損者とのデータの比較の方法に問題があった。そのため、平成23年度には、健常群データの再解析を実施し、ブートストラップ法によるリサンプリングにより、健常群の分布推定を厳密に行い、その上で脳梁欠損者のデータと比較した。その結果、実験に参加した脳梁完全欠損者、脳梁部分欠損者とも、健常群と同等の機能的結合性パターンを有していることが明らかとなり、この研究成果を平成23年9月に開催された第1回国際医療福祉大学学会にて報告した。さらに、頭部外傷による高次脳機能障害者を対象とし、機能的結合性と高次脳機能障害との関連について検討を行った。接続する神経線維の離断が想定される脳部位間の機能的結合性が低下している結果が得られたが、先の脳梁欠損者の実験によって得られた結果を併せて考えると、直接的な神経線維連絡を有しない脳部位間にも機能的結合性が生じる可能性は否定できず、それが、高次脳機能障害者の有する障害の改善と関連することも想定され、今後、継時的な測定の必要性が示唆された。
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