本研究は、特異的言語発達障害(SLI)児の、(1)母語音韻知覚能力、(2)事物-音声ラベルの対応付けによる単語学習能力、(3)統計的遷移確率に基づく単語抽出能力の3項目を検討することを目的とし、言語発達の遅れの要因となるSLIの音韻処理の弱さ、及び語彙習得困難の背景にあるメカニズムの実証的解明を目指す。平成21年度は、特に項目(1)(2)を遂行するために必要な実験プロトコルの開発とタッチパネル式コンピューターへの実装を行った。具体的には、項目(1)の音韻の弁別能力を測定するために「異音選択課題(oddity task)」を設定し、タッチパネル式コンピューターに実装した。また異同選択課題のパイロット実験において、記憶負荷の高さが正確な測定を妨げる可能性が示唆されたため、記憶負荷の低い「異同判断課題(same-different task)」を設定し、新たにこれを実装した。同じく項目(1)の事物-音声ラベルの対応付けによる単語学習能力を測定するために「未知語学習・同定課題(unknown word learning and identification task)」を、さらに、未知語学習への負荷を与えずに同定能力を測定するために「既知語同定課題(known word identification task)」を設定・実装した。これにより、効率的に項目(1)(2)を検討するための実験装置の開発が終了した。
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