本研究は、メディアアート作品をリハビリテーションに活用することを目的とし、コア技術の開発、感性に訴えかける新しい作品の制作および効果の検証、社会へのPRを行う。制作方針としては、からだのリハビリを担うものとして「身体動作」、こころのリハビリを担うものとして「社会的交流」、引き込み現象・感性を刺激するものとして「音響」、以上3つの要素を含むことを基盤とし作品へと展開する。また、作品制作の前段階としては、コンピュータによる「あいのて」の模擬を実現すべく、あいのてを入れてもらって運動する側と、運動をしている人を見ながらあいのてを入れる側が、お互いどこに注目し、その行動を行っているかということを音声・画像分析手法によって評価する。それを用いて"絶妙なタイミング"で音を発し身体動作を誘発するあいのてシステムをコア技術として構築する。 昨年度は、音を聴き運動を行う人に及ぼす生理、心理、運動パフォーマンスについて、音の発音条件を変化させながらどのような差があるか比較検証を行い、作品設計時にその成果を応用した。今年度は、前年度に制作した機器をネットワーク化し、遠隔地にいる者同士がコミュニケーションを行いながらリハビリテーションに活用できるシステムを構築した。そのシステムを構築する際には、楽しさや心地よさなどネットワークの応答速度が参加者におよぼす心理的な影響について検証を行った。これらは、リハビリテーションで活用することを目指したメディアアートとして社会での認知を達成するべく、雑誌論文、国際会議、メディアアートのイベント等において発表・展示・実演等を行った。それらの取り組みにより、メディアアート作品がリハビリテーションに活用できるという道筋を示すことができた。これからのリハビリテーション支援機器の開発において一線を画すような「こころ豊かな」高い感性価値をものが今後も誕生することが期待できる。
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