研究概要 |
本研究は,高齢者個々人の状態に応じた適切な起立支援方法を決定するため,起立支援を受ける高齢者の動作をシナジー仮説の知見を用いて工学的にモデル化することを目的とする.具体的には,シナジー仮説の知見をロボット工学における人間の動作を規範とした多自由度制御問題の解決手法と捉え,人間の起立動作の筋力駆動パターンをモデル化する.更に高齢者の身体状態を筋力駆動特性(例えば発揮できる力,反応速度)として表現することで,高齢者個々人の身体状態を考慮した起立動作モデルを開発することを目指している.本年度は,以下について研究を行った. 1.シナジー仮説を用いた起立動作のモデル化 昨年度実施した「起立支援装置を用いた起立動作解析」にて導出した被験者の腰,膝,足首周りの筋力評価データを基に,シナジー仮説に基づき,各筋力の駆動パターンの波形を抽出するために必要なシナジー数の導出を試みた.特に本年は,昨年度実施したシナジー数の評価結果を基に,使用するシナジー数を決定した. 2.高齢者起立モデルの構築 1.においてシナジー抽出の際に算出された発火強度と発火タイミングに従い,筋電位波形の再構築を行った.再構築の結果,筋力評価に用いた各筋力波形に関して,強度,タイミング共にほぼ再現できた.また,起立動作モデルとシナジーの発火タイミングを時系列で評価し,各動作フェーズにおけるシナジーの役割を推定した.さらに,各動作フェーズが持つ動作の性質を明らかにすることで,起立動作を異なる動作フェーズの連続としてモデル化することの妥当性を明確にすることができた.
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