研究概要 |
本研究の目的は,人工内耳や補聴器等の聴覚障害を補う機器による音声コミュニケーション能力の伝達性能を評価するための尺度を作成することである.昨年度までに,聴覚補助器による話者識別能力を評価するための尺度,および,話者の発話意図判断能力を評価するための尺度の作成に関わる基礎実験を行った.本年度は昨年度までの基礎実験の成果を踏まえ,話者識別能力を評価するためテストのプロトタイプを作成した.本テストは,電総研単語音声データベース(ETL-WD)から発話者と単語を抽出することにより作成した.発話者は,フォルマント空間とFOを考慮して男女5名ずつ計10名抽出した.フォルマント空間とFOは,昨年度までの基礎実験で話者識別に有効なパラメータであることが確認されたものである.また,単語は1) 無アクセント語,2) 4モーラ語,3) 単語親密度の低いもの,という基準を満たすものを10語選択した.本テストが聴覚補助器の性能を正しく評価できるか人工内耳シミュレータを用いて確認したところ,人工内耳の電極数の増加に応じて正答率が上昇していることが確認された.ただし,この上昇傾向は単音節明瞭度の上昇パターンとは異なっており,本テストは単音節明瞭度とは異なる面の聴覚補助器の性能を評価していることが明らかになった.よって,本テストは聴覚補助器の性能評価に有効であることが示された.
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