本研究は、イギリスを中心に欧米で着目されつつあるダンス教育法LOD(ランゲージ・オヴ・ダンス;Language of Dance)に着目し、幼児の豊かな身体表現力を養うツールとしての、日本の教育現場への導入の可能性を検討するものである。平成21年~22年の幼児を対象とした実践内容を踏まえ、本年度は主に研究の総括と成果の公表を中心に行った。 (1)実践に向けたLODテキストの語彙の問題の整理 第一に、国内のLOD専門家とともに、LODの教科書Your Move : A New Approach to the Study of Movement and Dance second edition (2008)(1983年初版の改訂版)日本語訳の検討作業を進めた。素訳は前年度までに終了していたため、本年度は校正として日本語訳が適切であるか確認作業を進めた。 (2)研究成果の発表 LODの母体となる、ルドルフ・フォン・ラバンの運動理論から派生した運動記譜法を検討する国際学会(International Conference of Kinetography of Laban : ICKL)にて発表を行った。LODを採り入れた身体表現教育は、運動要素を技術的に習得する「技術習得型」ではなく、運動のコンセプトのみ提示して子どもたちが自発的に考える「探求型」であることが特徴であり、日本の自発的な表現意欲や豊かな感性といった内面重視の教育の流れに適したものであることを日本で行った実践結果を踏まえて発表した。日本独自の教育法の開発と、またダンスという枠を超えた体育という領域全般にLODを発展的に適用しようとする試みが評価された。
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