研究概要 |
3年間の研究計画の2年目においては,幼少年期の身体活動や生活習慣等がこころと体の「調整力」に及ぼす影響について,調査研究に基づき解明を進めた. 第1に,児童の運動意欲に関わる心理社会的要因を明らかにするため児童585名を対象に検討を試みた.分析の結果,(1)食事・睡眠を始めとする生活習慣,そして座位中心の生活が少ないこと,(2)運動への心理社会的要因,体育授業,及び家庭環境への肯定的かつ積極的評価,(3)日常生活全体における身体活動量の高さ,が週間全体の身体活動量に正の貢献を示すととともに,上述の主たる3側面が「活力サイクル」の如く好循環し,結果的に学校体育への運動意欲を促進すると示唆された. 第2に,子どもを取りまく環境の変化の中で,子どもの身体活動量と自制心の育成に関わる心理社会的要因について明らかにするため,自動223名を対象に検討を試みた,学校生活を核とした児童の自制心育成に関連する要因として,1)食事・睡眠などの生活習慣の安定化,2)友人との良好な関係,家庭の運動への肯定的な態度,3)メディアとの適切な関わりが背景要因となり,4)学校内外での身体活動量の向上をもたらすことで,5)社会性の欠如(浅薄な関係性,批判的耐性,現実体験軽視,感覚志向)及び攻撃性の抑止をもたらし,引いては6)自制心の向上に貢献する,と示唆された. 以上の結果から,幼少年期のこころと体の調整力を育む心理社会的要因が明らかにされると同時に,家及び初等教育における効果的な実践方策のあり方について検討が進むことが期待される.特にこころと体の「調整力」育成について,生活環境,学習環境,社会環境,及び学びの系統性と適時性等について,具体的な実践方策の考案が求められる.
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