研究概要 |
3年間の研究計画の3年目においては,子どもを取りまく環境の変化の中で,子どもの身体活動量と身体的有能感の育成に関わる心理社会的要因について検討を試みた.以下に主たる結果をまとめる.(1)児童の生活環境(朝食摂取,友人数,短いTV視聴),そして運動意欲を支える心理社会的要因(体力,家庭,仲間,指導者)が相互に関連し合い身体有能感及び身体活動量を高めること,そして上述の要因に個々人の努力への肯定的な姿勢が伴うことで,学校生活での社会性(自制心,規律心,向社会性)と学習有能感の両面における向上という好循環を生み出す可能性が期待されること,が示唆された.(2)親のかかわり方と子どもの運動有能感及びレジリンスとの関連を分析した結果,子どもの運動(遊び)に関してその過程に目を向け,子どもの努力を認め,子どもの必要としている時に支援をする課題指向のかかわり方が子どもの運動有能及びレジリエンスの向上に肯定的な影響を与えることが示唆された. 以上の研究結果より,子どもの運動有能感の形成及び身体活動量の向上には,(1)運動に対する子ども及び親双方の重要性の認識の高さ,(2)適切な生活環境や生活習慣,(3)子どもの運動に対する親の肯定的なかかわりが関連していること,さらに(4)運動有能感と身体活動量の向上が,学校生活への適応感(協調性,規律心,自制心,向社会性),そして困難な状況が生じてもそこから逃げ出さず,受け止め,乗り越えていこうとする力であるレジリエンスの向上に貢献すること,が示唆された.「幼少年期の『こころと体の調整力』を育む心理社会的要因の解明」という主たる研究目的を掲げ,3年間の研究計画を遂行する中で,本研究成果により幼児を取りまく重層的な生育環境と遊び環境がその調整力の形成に密接に関わり大きな役割を果たしていることが解明された.
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