本研究は、大正期の各府県の公・私立小学校が実践した野外教育について、地域性を活かした活動に着目しながら比較史的に分析し、地域的な特色を基盤として、どのような野外活動が実践されたか、また、その教育的な特質と意義がどのような点にあるのかを究明するものである。 平成21年度は各府県で実施された野外教育について、その教育的特質と意義を個別に究明するため、大阪府・宮城県・岐阜県・香川県・岩手県・東京都における調査を実施し、各地域の公・私立小学校で実践された野外教育に関する資料収集を進めた。大阪府においては、汎愛小学校を中心に各学校における野外教育に関する資料や地元の工業に関する資料を収集できた。宮城県では、志津川における臨海学校の資料や民俗行事に関する資料を収集した。香川県では、香川県師範学校の附属小学校で実施された野外教育に関する文献資料や学校衛生に関する資料を収集することができた。岐阜県・岩手県・東京都でも、地域の産業や民俗行事に関する資料を中心に多数の資料を収集した。 収集した資料については、個別実践の教育的意義を明らかにするため、(1)野外教育を実施した地域的要因、(2)地域に見出した教育的価値、(3)教員の子ども観と問題意識、(4)野外教育論の理論的特質、(5)活動内容と効果的実践の工夫、という5つの観点から分析を進めている途上である。今後は、個別実践の意義について論文としてまとめるとともに、これらの成果を基にして各地域の実践を比較的に検討する予定である。
|