胃の主要な働きは食物貯蔵、消化撹拌、小腸への排出である。これら調節は中枢及び消化管からの遠心性・求心性入出力で調節されており身体的・心理的ストレスの影響を受けやすい。本研究は、胃からの求心性入力という視点から2種類の最大飲水負荷テストを用いて内臓知覚を評価し、運動能力、心身ストレス状態との関連について検討した。被験者は30名(女性15名、男性15名)を対象と、実験は3日間に分け実施した。各測定は1日1条件とした。実験1は形態、運動能力、心理指標による気分等の測定を行った。形態は、身長、体重、腹部脂肪計により腹部周囲径及び腹部脂肪率の測定を行った。運動機能は脚筋力(等尺性膝関節最大筋力と等速性筋力)、有酸素能力、全身反応時間、10メートル障害物歩行を測定した。また、各被験者には加速度センサー付き歩数計を約2週間装着してもらい平均身体活動量を求めた。さらに、ストレスホルモンとして尿中コルチゾール濃度を夜間蓄尿より評価し、体格よる影響を最小限にするためにクレアチニン値で補正した。実験2及び3では2種類の最大飲水負荷テストを実施した。各被験者は6時間以上の絶食後に実験室に来室し、リカンベント姿勢において15ml/min及び100ml/minの速度で室温の水をストローより飲む最大飲水テストを行った。また、最大飲水テストの前後20分間に胃電図、心電図、脳波を測定し求心性入力の変動要因について検討した。その結果、15ml/min及び100ml/minでの飲水条件には有意な相関関係が認められ、100ml/minの飲水条件は15ml/minに比較し有意な増大を示した。また、形態との関連では腹部脂肪率との間に負の相関関係が、運動能力との関係では等速性脚筋力と有酸素能力との関連で有意な正の相関関係が認められた。そして、心身ストレスとの関係では抑うつ及び疲労と負の相関関係が認められた。以上の結果から、飲水負荷による内臓知覚の評価は、腹脂肪率や運動能力、心理的側面に関連を持つことが確認された。
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