野球の投手は、多くのイニングを投げることによって試合の後半になると、「ボール速度が低下する」などのパフォーマンスの低下や、「肘下がり」などの動作の特徴が挙げられることが多い。これらのことから、投球数の増加が投手の身体機能やそのフォームに及ぼす影響は大きいと考えられる。 本研究は、大学野球投手を対象とし、投球数の増加にともなう投球動作の変化(キネマティクスおよびキネティクス)について検討することを目的とした。実験試技は、2台のフォースプラットフォームを埋設した簡易マウンドからストレートを投球するものであった。被験者には、10秒間隔で15球投げることを1イニングとし、イニング間に6分の休息をはさみながら9イニング、計135球の投球を行わせた。 投球数の増加にともない、以下のような傾向がみられた。1.ボール速度は減少した。2.踏込脚接地時および肩関節最大外旋時において踏込脚股関節の屈曲角度が増加した。3.踏込脚接地時において肩関節外転角度が減少した。4.肩甲帯の挙上角度が減少し、肩甲帯の前後方向の可動域が減少した。5.踏込脚の股関節伸展の正仕事、負仕事、絶対仕事が減少した。踏込脚の股関節伸展の絶対仕事が減少したことは、下肢のトレーニングの重要性を示唆するもので、踏込脚接地時での肩関節外転角度の減少は、「肘下がり」を示すものであると考えられる。また、「肘下がり」には、肩甲帯の動きも影響していることが考えられる。
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