研究概要 |
私の前までの研究は、野球を一つの例として、日本の高校の部活動の教育的な役割を調査して来た。今回の研究では野球部に限らず、全ての部活動の教育的な役割を検証し、各部活動間の比較検討を行なうための調査。全国から18の高校の三年生にアンケート調査を実施し、3,753名の回答者を得た。アンケートには部活動に入部したかどうか、どの部に入部したか、練習時間、強さ等部活動についての項目と同時に、本人の自己認識、価値観、そして高校卒業後の進路についての項目も設けた。なお、平成21年の秋に流行した新型インフルエンザの影響で、調査の対象となる幾つかの学校で学級閉鎖になったため、調査を実施、収集できる時期が遅れてしまい、21年度分からの繰り越しが必要になったが、22年度で全てのデータを収集し、入力作業が終わり、SPSSソフトを用いた分析を行った。 結論から言うと、部活動(とくに運動部)に関わっている者は、その活動を通してさまざまなことを学び、身につけていると信じている。そして、部活動は進路、自己認識、価値観などと、強い相関関係があることがわかった。たとえば、多くの部活動の参加者が部を通して「感謝の気持ちの大切さを覚えた」や「礼儀正しくなった」などと答えている。なお、自己認識の面では、部活動の加入者が未加入者より「自分は感謝の気持ちを忘れない」、または「自分は礼儀正しい・挨拶をしっかりする」と答えている。そして、価値観の面では、部活動の部員は他の生徒より「感謝の気持ち」や「礼儀」が大事だと評価する。 多くの人は、印象としては部活動の教育的効果を認めているし、それは文化部より運動部についてより強く感じている。しかし、実態調査に基づく客観的な統計はほとんど無かったから、この研究は、「印象」程度だった部活動の教育的効果を客観的なデータで証明した。以上から、本調査によって、部活動の教育的役割をはっきり示すことができたといえる。
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