本研究は、1998年長野冬季オリンピックを開催した長野県長野市、2002年W杯サッカー日韓大会を開催した茨城県鹿嶋市を事例にして、「メガスポーツイベント開催後の遺産は何か」、「住民たちの地域生活において変容したことは何か」について、社会学的な視角から分析をし、その内実を実証的に明らかにすることを目的としている。 長野市/鹿嶋市における「メガスポーツイベントの遺産」は、平成21年度の聞き取り調査や資料収集から、両市ともに次の二点に集約された。 (1)インフラの整備……高速道路や幹線道路の整備(長野・鹿嶋)、新幹線の整備(長野) (2)ボランティア活動の定着……各種スポーツ大会へのボランティア活動の継続的な参加(長野・鹿嶋) 平成22年度は、両市において更なる聞き取り調査や資料収集から、「住民たちの地域生活において変容したこと」を明らかにし、社会学的な視点で分析したところ、次のように結論づけられた。 長野市/鹿嶋市におけるメガスポーツイベントの遺産は、いわゆる〈スポーツ振興〉に結びつくものではなく、両市における「生活の社会化」を促進させるものであった。また、スポーツへの関わり方においても、いわゆる「スポーツの社会化」が進行し、住民個々人が対応するものとしてスポーツは位置づいていた。すなわちメガスポーツイベントは、住民たちが通時的に築きあげてきた地域生活の根幹である社会関係には抵触することなく、一過性のイベントとして住民たちに経験されたことを意味していた。
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