研究概要 |
本研究は,幼児期から成長期にわたる選手を有するスポーツクラブに所属する選手を対象として体格・運動能力の測定を実施し,各選手,クラブの特徴を見出すとともに,他種目多競技のクラブを測定することで競技種目の特徴的な体格,運動能力の指標を明らかにすることを目的とする.次に,得られた結果を基礎データとして,日本人を対象とした生物学的成熟度の推定式を作成するため,年間最高身長増加年齢を過ぎていると思われる男女スポーツ選手を対象に調査を行い,日本人に適した生物学的成熟度の推定式を作成するための基礎データを収集することを目的とする.平成22年度は,継続,新規含めて12種目,35クラブ,619名の測定を実施し,基礎データに追加することができた.得られたデータからウェーブレット補間法を適用して学齢期男子の思春期最大発育速度(MPV),局所的極大発育速度(LPV)の解析を試みたところ,身長,体重の発育速度曲線に示されたMPV年齢は13.2歳,13.5歳と従来の知見を指示していた.特に,BMIと体脂肪率の加齢変化速度曲線に示されるLPVは両要素において重なることが示されたが,加齢現量値曲線ではBMIは増大傾向を示すが,体脂肪率では減少傾向を示した.運動能力発達はScammonの神経型と一般型の発育パターンによる混合型を示すとされるが,本研究における各運動能力の発達速度曲線に示されたLPVの出現は,20m走,プロアジリティ・テスト,反復横跳びは,より神経系の関与が強く,垂直跳びや立ち幅跳びで,その中でも立ち幅跳びの方がより一般型の発育に負うことが強いことを主張する有力な知見と位置づけられるだろう. 本研究を継続して行うことにより,競技種目別の体格・運動能力の特徴を幼児期~青少年期まで関連させることができるという点で非常に意義は高いと考える.
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