研究概要 |
本年度は,ストレッチングのプロトコール検討のため,まず受動的足背屈ストレッチング中の受動トルクおよび筋血液量変化を調べた.15,30,60秒間の各ストレッチング角度維持時間において,腓腹筋内側頭(MG)の筋血液量が安静時に比較して有意に減少した.60秒間のストレッチングでは,ストレッチング角度維持の後半において.筋血液量の増加が見られた.60秒間のストレッチングについては,一定角度を維持している間に,受動トルクの減少により伸長された筋内血管が弛み,血液が流入しやすくなった可能性が考えられる. これらの結果をもとに,静的足背屈ストレッチングを,ストレッチボードを用い,1回60秒間を5セット,一日当たり3回,3日間行い,短期間のストレッチングエクササイズのトレーニング効果について検討した.トレーニング後には,足関節背屈における関節可動域の有意な増加,一定の関節角度における受動トルクの有意な減少が見られた.しかし,最大筋力には有意な変化は認められず,超音波Bモード法による安静時およびストレッチング時の筋東長にも有意な変化は認められなかった.また,超音波RF信号解析による力発揮時の筋束動態については,収縮開始から足底屈トルク発揮までの筋束の挙動に空間的および時間的な変化が認められた.本研究の結果により,静的ストレッチングの効果を,対象とする筋の広い測定範囲にて評価できる可能性が示唆された.
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