研究概要 |
レジスタンストレーニングの1セッション(1日分)のように激しい運動を行うと、血中乳酸濃度、ホルモン濃度、Magnetic Resonance Imaging (MRI)法により求められる横緩和時間(T2)の変化や腫脹など一過性の応答が観察される。これらの一過性の応答が習慣的に繰り返されることで生体に適応が起こり、長期のトレーニング効果として表れることを考慮すると、1回のトレーニングセッションが引き起こす一過性の応答は、トレーニングによる長期的変化と関連が深いと推測される。本研究では、トレーニングセッション直後に観察される筋の一過性の応答に着目し、それらとトレーニングセッションを長期的に繰り返した際の効果との関連を明らかにすることを目的とした。 平成21年度は1回のトレーニングセッションによるT2値の変化および腫脹(筋断面積の増加)について、特に単一筋内の部位差に着目して実験を行った。成人男性12名に肘伸展筋群を対象としたレジスタンストレーニングを1セッション行わせた。被験者は、仰向けで肩関節90度屈曲位での肘関節伸展・屈曲運動を行った。1回最大挙上重量の80%に相当する重量のダンベルを用いて、上記運動の8回の反復を1セットとし、5セット行わせた。トレーニングセッションの前と直後に,MRI法を用いて上腕のT2強調画像を撮影し、上腕三頭筋のT2値および筋断面積を計測した。その結果、T2値の変化および筋断面積の変化率は遠位(肘に近い部位)に比べて近位(肩に近い部位)でより大きかった。この結果は、レジスタンストレーニングを行った直後の筋の一過性の応答は、同一筋内であっても部位によって異なることを示唆するものであった。
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