平成22年度は、1回のトレーニングセッションによる主働筋の横緩和時間(T2)変化の部位差と、長期トレーニングによる筋肥大の部位差との関連を検討した。成人男性12名に上肢筋群を対象とした多関節動作によるレジスタンストレーニングを、週3回の頻度で12週間行わせた。トレーニング動作は「ダンベルプレス」と同様の動作で、仰向けで腋の真上に持ったダンベルを、垂直に上下動させるものであった。この運動の1回最大挙上重量を測定し、その80%に相当する負荷で、8回の反復を1セットとし、5セット行わせた。第1回目のトレーニングセッション前後に、MRI法を用いて上腕のT2強調画像を撮影し、上腕三頭筋のT2値を計測した。また、12週間のトレーニング期間前後に、MRI法により上腕のT1強調画像を撮影し、上腕三頭筋の筋断面積を計測した。その結果、1回のトレーニングセッションによるT2値の変化は、上腕三頭筋の近位(肩に近い部位)に比べて中位から遠位(肘に近い部位)で大きかった。同様に、12週間のトレーニングによる筋断面積の増加率は、上腕三頭筋の近位に比べて中位から遠位で高かった。この結果は、一過性のT2変化の部位差が長期トレーニングによる筋肥大の部位差と関連が深いことを示唆するものであった。また、本研究で用いた手法を応用することにより、長期トレーニングによる筋の肥大パターンを、一過性のT2変化から予測できる可能性が示された。
|