研究概要 |
〈研究の目的〉 平成21年度の研究成果は,聴覚領域へのパーソナルテンポ(以下,『PT』とする)付与よりも行動領域への付与の方が,より調息法の効果を高める可能性が考えられたことから,本年度は行動領域のPTを付与した調息法の効果を明らかにした. さらに,効果を明らかにする指標は,平成21年度は鏡像描写という小筋運動および生体電気である脳波を用いたが,今年度は大筋運動であるバドミントンのショートサービスを用いた. 〈研究の概要〉 被験者:バドミントン競技者(市民大会上位進出レベルの男性)11名 条件:コントロール条件(通常のショートサービスを行う),聴覚刺激(電子メトロノーム)を用いてパーソナルテンポを付与した上で調息法(腹式呼吸)を行う条件(テンポ条件),行動刺激(指によるタッピング)を用いてPTを付与した上で調息法を行う条件(タッピング条件)の3つの条件における課題成績の違いを検討した. 結果:各条件におけるバドミントンショートサービスの成功数の比較および被験者の内観報告の結果,以下のことが明らかになった. 1)統計的に有意なパフォーマンスの変化は認められなかった. 2)パーソナル調息法によって運動パフォーマンスが向上した被験者の内観報告を分析した結果,彼らはパーソナルテンポに対して好意的な印象を報告した. 3)パーソナル調息法によって運動パフォーマンスが低下した被験者の内観報告を分析した結果,彼らはパーソナルテンポに対して否定的印象を報告した. 〈本研究の意義〉 本研究は,パーソナル調息法が効果的に作用するには,実施者が主観的に「心地よさ」や「違和感のなさ」を感じる必要があるという仮説的知見を導出した点で意義を有する.被験者が心地よくパーソナルテンポを用いた調息法を行うためには,リズム化(Chunking)しやすいように聴覚刺激を工夫する,運動領域への刺激と合わせること等が考えられた.
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