研究概要 |
本研究の目的は、筋電気刺激によるヒト運動単位動員特性の非侵襲的解析法を確立し、その妥当性について検討することである。平成21年度については「詳細な実験プロトコルの決定と繰り返し測定による再現性の確認」を課題とした。得られた知見は以下の通りである。 1)下腿三頭筋に超最大強度の電気刺激を与え、様々な強度(最大筋力の10~100%)の随意収縮直後に単収縮を誘発した。その結果、単収縮ピークトルクの増強程度と随意収縮強度の関係は明らかに非線形であり、随意収縮強度が30%以下の場合にはピークトルクの増強が認められなかった。 2)単収縮ピークトルクの増強程度を7~12日を隔てた2回のセッションで比較したところ、高い再現性が認められた(級内相関係数:0.93) 3)単収縮ピークトルクの増強程度と、単収縮トルクがピークに到達するまでの時間との間には、有意な負の相関関係が認められた(相関係数:-0.63),同様に、単収縮ピークトルクの増強程度と、単収縮トルクがピークから半分に減衰するまでの時間との間には、有意な負の相関関係が認められた(相関係数:-0.31)。 4)随意収縮中の下腿三頭筋(ヒラメ筋、腓腹筋内側頭、腓腹筋外側頭)について表面筋電図信号を取得し、振幅特性と周波数特性について調べた。その結果、収縮強度増加に伴い振幅(交流実効値換算)が三筋ともほぼ直線的に増加した。一方、パワースペクトル中央周波数値については、ヒラメ筋と腓腹筋内側頭では収縮強度増加に伴う直線的な増加が観察されたが、腓腹筋外側頭ではそのような傾向が認められなかった。 5)以上の結果から、(1)様々な随意収縮直後における単収縮トルクの増強程度を調べることにより、速筋線維の動員を再現性よく観察できること、(2)速筋線維の動員は筋電図周波数特性には反映されないことが示唆された。
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