研究概要 |
本研究の目的は、筋電気刺激によるヒト運動単位動員特性の非侵襲的解析法を確立し、その妥当性について検討することである。平成22年度については方法の妥当性をさらに検証するべく、セッション内再現性の確認を行なった。詳細は以下の通りである。 【背景と目的】短時間の随意収縮(等尺性足底屈動作)直後に下腿三頭筋に超最大強度の電気刺激を与えて単収縮を誘発すると、収縮強度依存的に単収縮のピークトルクが増大する。この現象は、ピークトルクの増大の程度が随意収縮中の速筋線維の活動を反映していることを示唆している。しかしながら、同一強度の収縮を間欠的に級り返した場合にもピークトルクが増大するのであれば、その増大率を直ちに速筋線維の活動と結び付けることは困難である。そこで、同一強度の随意筋力発揮に対する単収縮ピークトルク増大率の再現性(セッション内再現性)について定量化することを目的として研究を行なった。 【方法】等尺性足底屈動作における随意最大筋力の10、20、30、40、60、80、100%に相当する6秒間の筋力発揮をそれぞれ3回ずつ繰り仮し、直後に後脛骨神経刺激(超最大強度)を与えて単収縮を誘発した。筋力発揮間の休息は最低でも1分とした。 【結果】同一強度の随意筋力発揮に対する単収縮ピークトルク増大率の再現性は非常に高く、級内相関係数は0.99(95%信頼区間:0.985-0.995)であった。また、二元配置分散分析の結果、統計的に有意な交互作用(収縮強度×反復回数)は認められなかった(F_<12,60>=1.45,P=0.17)。 【結論】以上の結果から、短時間の随意筋力発揮直後における単収縮ピークトルクの増大は、筋力発揮の繰り返し回数に依存するものではなく、収縮強度依存的な速筋線維活動の増大を反映したものであることが示唆された。
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