研究概要 |
本研究の目的は、筋電気刺激によるヒト運動単位動員特性の非侵襲的解析法を確立し、その妥当性について検討することである。我々は前年度までの研究により、1)足底屈筋群に単一の電気刺激を与えた際に発揮される足底屈トルクのピーク値(単収縮ピークトルク)がわずか6秒の随意筋力発揮により増強されること、2)単収縮ピークトルクの増強程度は随意筋力発揮の強度に強く依存し、特に低強度(随意最大筋力の30%未満)の筋力発揮は単収縮ピークトルクの増強をもたらさないこと、3)単収縮ピークトルクの増強は収縮時間(電気刺激からピークトルクに到達するまでの時間)および1/2弛緩時間(ピークトルクが半分に減衰するまでの時間)の短縮を伴い、単収縮ピークトルクの増強程度と収縮時間および1/2弛緩時間との間に有意な負の相関関係が認められること、4)これらの現象はいずれも高い再現性を示すこと、等の知見を得ており、研究計画の最終年度となる平成23年度はこれらの知見を原著論文としてまとめることを中心に研究活動を展開した(Sasaki,Tomioka,Ishii,印刷中)。これまでに得られた知見は、我々の仮説「短時間の随意筋力発揮直後における単収縮ピークトルクの増強程度は、随意筋力発揮中の速筋線維(または速筋型運動単位)活動の指標となる」を支持するものであった。非侵襲的かつ極めて短時間に速筋線維活動を評価できることは、筋バイオプシー法やワイヤー筋電図法にはないメリットであり、運動処方のカスタマイズや有効性の予測などへの活用が期待される。
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