研究課題
以前より我々は、持久性トレーニングによる体温上昇に対する皮膚血管拡張の感受性亢進には、血液量の増加が強く関与することを示してきた。一方、心電図の任意のR波を0時とし5秒目までの皮膚交感神経活動(SSNA)について発火頻度分布を0.05秒毎に求め1分毎に加算平均すると心周期に一致したピークを認め、さらに、この5秒間の波形のピークと基線の間の部分を積算し心拍数を乗じると(upper area;UA)、体温の上昇と共に増加傾向を示し、低血液量時に皮膚血管拡張反応が抑制されるときに、その増加の感受性が減弱することを示した。これらのことは、心周期に一致したSSNA成分が皮膚血管拡張反応に関与することを強く示唆する。そこで本研究の目的は、持久性トレーニングによる血漿量増加のため皮膚血管拡張反応が亢進するとき、UAが増強するか否かを検討することである。昨年度は、測定手技とプロトコールの確立のために、予備的に2名の被験者に対して、5日間の持久性トレーニングを行なわせ、その前後で血漿量を測定した後、暑熱負荷時におけるSSNAを腓骨神経から測定し、その支配領域である足背部のブリチリウム(血管収縮神経活動遮断剤)処置部(BT)の皮膚血流量を血圧と食道温(Tes)と共に測定した。その結果、5日間のトレーニングにより血漿量がトレーニング前に比べて6.3%もしくは4.5%増加し、同時にTes上昇に対するBT部位の皮膚血管コンダクタンス(=皮膚血流量/平均動脈圧)上昇の感受性がそれぞれ26%、29%増加した。このとき、UAはTes上昇と共に増加し、その増加の感受性(UA/Tes)はトレーニング後にそれぞれ26%、30%増加した。このことは、持久性トレーニングによる皮膚血管拡張反応の亢進がUA/Tesの増加により説明できる可能性があり、心周期に一致したこの成分が血管拡張神経成分であることを示唆する。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件)
Br J Sports Med ((In press))
J Physiol (Lond) 587
ページ: 5569-5575
J Appl Physiol 107
ページ: 531-539
Med Sci Sports Experc 41
ページ: 2213-2219