最近我々は、ヒトにおいて心電図の任意のR波を起点とし原波形皮膚交感神経活動(SSNA)のスパイク頻度を数えてヒストグラムを求めたところ、R波からの潜時が約1.3-1.1秒の心周期同期成分を同定し、この同期成分は食道温(T_<es>)上昇により増加することを、さらに、低血液量により暑熱負荷時における皮膚血管拡張反応が抑制されるとき、この同期成分の上昇も抑制されることを明らかにした。これらの結果は低血液量がこの同期成分を減少させ皮膚血管拡張を抑制することを示す。一方我々は、暑熱馴化による血液量増加がT_<es>上昇に対する皮膚血管拡張を亢進させることを示してきた。そこで本研究では、持久性トレーニングによる血液量増加により皮膚血管拡張反応が亢進するとき、SSNA心周期同期成分が増強するか否かを検討した。若年男性2名に5日間の持久性トレーニング(暑熱馴化)を行なわせ、各トレーニング直後に1名には糖質+タンパク質(Pro-CHO)、もう1名には糖質のみを摂取させ(CHO)、その前後で血液量を測定し、暑熱負荷時におけるSSNAを腓骨神経から、その支配領域である同側足背部の血管収縮神経活動遮断剤処置部の皮膚血流量を血圧とT_<es>と共に測定した。その結果、5日間の暑熱馴化により血液量は馴化前に比べてPro-CHOで11%、CHOで2%増加し、皮膚血管コンダクタンス(CVC=皮膚血流/血圧)上昇のT_<es>閾値も馴化前にはPro-CHOで37.3℃、CHOで36.9℃であり、馴化後にはそれぞれ0.3℃低下、0.1℃増加した。この同期成分上昇のT_<es>閾値も馴化前にはCVCのそれと同値で、馴化後にはPro-CHOで0.3℃低下、CHOで0.1℃増加した。以上の結果は、暑熱馴化による血液量増加はT_<es>上昇に対するSSNA心周期同期成分上昇を亢進させ、皮膚血管拡張反応を亢進させることを示唆する。
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