本研究は、血液由来成分混入の可能性を排除するために培養細胞を用いた新たな筋収縮実験モデルを構築したうえで、収縮時に骨格筋から分泌される液性因子(分泌蛋白質)を探索・同定することを目的としている。H21年度は課題1;細胞培養系を用いた骨格筋収縮実験モデルの構築と課題2;筋収縮によって培養液中に蓄積する分泌蛋白の同定までを実施した。 課題1の収縮モデル系構築では、心筋の初代培養の際に分化状態を維持させる目的で使用される電気刺激収縮装置を骨格筋培養細胞系に応用し、約80%のマウスC2C12細胞株を収縮させることに成功した。さらに、電圧や、収縮時の糖濃度の検討することで、20V、25mMのグルコースを含むKrebs-Ringer Buffer中で6時間以上収縮させることが可能になった。 課題2の分泌タンパク質の同定では、課題1で作成した収縮装置で、収縮、回収した培養上清をサンプルとした。サンプルは濃縮してプロテオミクス解析に供した。その結果、収縮させていない細胞からは342の蛋白質が、収縮させた細胞からは428の蛋白質が発見された。両者共通の蛋白質は299個あった。さらに、in silico解析により、収縮させていない細胞から165個、収縮細胞からは205の蛋白質が分泌タンパク質の可能性があることが明らかになった。 現在は、そのうちの数種の蛋白質について、マウス骨格筋を用いて、実際に発現しているかをPCRやウェスタンブロッティング法で検討している。さらに、収縮が引き金となって分泌されるかについてはin vivo electropolation法によって一過性に過剰発現したモデルマウスを作製することで検討している。
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