研究概要 |
四肢を協調して動作させる時,神経筋及び知覚系の制約により各肢の動作(各肢の筋)に相互作用が生じる.先行研究から,筋弛緩には,筋収縮と類似した皮質での準備プロセスが必要とされることが示唆されている.このことから,協調動作において筋収縮と筋弛緩(リラックス)を同時に行う時には,収縮と弛緩の指令が相互に干渉し合い,目的とする協調動作の遂行を阻害しているかも知れない.本年度の研究では,同側の手関節背屈筋・足関節背屈筋を対象とし,一方の筋で筋収縮,他方の筋ではリラックスを同時に行う時にどのような相互作用が生じるかを動作パフォーマンスの点から明らかにすることを目的とした実験を行った.動作パフォーマンスは反応時間,関節動作速度,筋電図を測定指標として検討した.実験のタスクとしては,脱力状態から右手関節の能動的背屈(Ha),脱力状態からの右足関節の能動的背屈(Fa),能動的に軽く右足を背屈した状態からの筋弛緩による受動的な足底屈(Fp),HaとFaを同時に行う(HaFa),HaとFpを同時に行う(HaFp),の計5種の動作を動作開始合図を聞いたら全速で行うというタスクとした.その結果,筋弛緩と筋収縮を同時に行う時,反応時間が遅延し,また,筋収縮の程度が小さくなり動作速度が低下することが示された.同時に行う筋収縮の有無によって筋弛緩開始後のプロセス(筋電図の変化の仕方)には違いは生じなかったが,同時に行う筋収縮は意図しない筋活動(Faにおける足底屈筋の活動)を引き起こすことが認められた.これらの結果から,同時に行う収縮と弛緩は相互に干渉し合うことが動作レベルで示された.
|