研究概要 |
我々の研究グループでは、これまでにラットエキセントリック筋収縮装置を用いて比較的短期肉離れ損傷モデルを報告している。しかし、このモデルは、筋力低下が2-3日と比較的短期間であり、かつ筋重量に関してはコントロール群との比較において有意な差が認められないというものであった。そこで昨年度より上記の問題点を解決するために骨格筋萎縮モデルの作成を試みている。このモデルは一日おきに計4回の高強度エキセントリック収縮を実施するものである。本年度は、そのモデルを使用し、1)筋線維組成、2)アポトーシス、3)タンパク質・遺伝子発現量の変化について検討した。 解析の結果、重度肉離れ群とコントロール群との比較において、有意な骨格筋量の減少・筋力の低下を観察した。筋線維組成には変化が認められなかったことから、全ての筋線維タイプにおける萎縮が考えられた。さらに、本研究で用いたモデルにおける筋萎縮はアポトーシスではなく、タンパク質分解によって引き起こされることが示唆された。特にFOXO1, 3, myostatin (TGF/smad系)の発現は顕著であり、筋重量の減少と深く関連するものと考えている。 本モデルで観察した結果は、スポーツ現場において頻発する肉離れ損傷のメカニズムの解明に新たな知見を得え、かつ肉離れ損傷の発症の予防と回復を促進する上での基礎データを提示するものといえる。特に、myostatinのタンパク質量が顕著に増加していたことは、骨格筋の萎縮のみならず結合組織瘢痕化にも関与する可能性を示唆しており、今後更なる検討が必要であると考えている。
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