【背景】運動中のエネルギーの多くはミトコンドリアから供給される。つまりミトコンドリアの量や機能は持久的能力を決定する強い因子となるであろう。ミトコンドリアの強力な増殖因子として作用する因子としてPGC-1αがr司定され、またPGC-1αの遺伝子多型も報告されている。PGC-1遺伝子のGly482Ser多型間では、骨格筋のPGC-1αの遺伝子発現量に差が生じ、Gly/Gly+Gly/Serに比べてSer/Serは低値を示す(Ling et al.J Clin Invest.2004)。これらの背景から、PGC-1の遺伝子多型が骨格筋ミトコンドリアの量や機能に作用して、有酸素性作業能力に及ぼすと考えられる。【目的】PGC-1α遺伝子Gly482Ser多型間で有酸素性作業能力に差が生じるかを、日本人を対象として調査する。【方法】対象者は197名(男性75名、女性122名)の日本人高齢者である。有酸素性作業能力の評価のために、最大下多段階漸増ステップ運動を実施した。有酸素性作業能力の指標として乳酸閾値(LT)強度を用いた。【結果】対象者の年齢は71.5±5.9歳(平均±標準偏差)であり、Gly482Ser出現頻度はGly/Glyは48名(24%:男性20名、女性28名)Gly/Serは104名(53%:男性38名、女性66名)Ser/Serは45名(22%:17名、28名)であった。遺伝子多型間で男女比、年齢、身長、体重と体格指数に差を認めなかった。LT強度はそれぞれ、Gly/Glyが4.6±0.8Mets、Gly/Serが4.8±0.9Mets、Ser/Serが4.3±0.9Metsであり、3群に有意差を認めなかったものの、Gly/Gly+Gly/SerとSer/Serの比較ではGly/Gly+Gly/Serが有意に高い値を示した。
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