本研究はヒトを対象としてPGC-1α並びに転写因子の遺伝子多型と、骨格筋のミトコンドリア量と機能の関連を調査し、さらに持久力との関連を調べることである。この研究では、ヒトの骨格筋を用いて遺伝型と表現型の関係を明らかにすることが重要な点である。平成21年度に引き続き22年度も対象者を増やし、現在までに運動トレーニング習慣のない141名の対象者から、それぞれ20mg程度の骨格筋サンプルを得るに至った。このサンプルからミトコンドリアの量の指標となるCardiolipinの定量を行うために高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた分析の準備を進めた。同対象者の血液からゲノムDNAを抽出して、PGC-1αの遺伝子多型の解析を進めた。 これらの対象者に運動負荷試験も実施をして持久力の評価も行っている。持久力の指標としては最大酸素摂取量が一般的に用いられるが、本研究の対象者は中・高齢者が中心であり、研究を進めていく中で、運動負荷漸増に伴う酸素摂取量のレベリングオフの確認、または(1)血中乳酸8mM以上(2)最大心拍数が220-年齢(年齢からの推定最大心拍)以上(3)呼吸交換率1.1以上(4)主観的運動強度18以上という疲労困憊の条件を満たすことが困難な対象者が多いことが分かった。そこで最大酸素摂取量の代わりに、乳酸閾値を用いることとした。これは運動負荷漸増に伴い血中乳酸濃度が急増する点であり、最大酸素摂取量に勝るとも劣らない有酸素性作業能力の指標である。 最終年度に、上述した遺伝子多型、ミトコンドリアの量と持久力の関係をまとめることができるように準備を進めた。
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