欧米諸国を始めとする先進国では細胞診による検診の普及より子宮癌の死亡率は低下してきているが、初交年齢の若年化により、30歳台での発生が増加傾向にある。この対策として、子宮癌発生の原因となるヒトパピローマウイルス感染に関する知識、ワクチンについての啓蒙、また定期的な検診があるが、我が国の検診受診特に若年者の受診率が低く、その理由として「時間的負担」や「羞恥心」などがある。本研究では新しい啓蒙法と負担の少ない自己採取法の開発と試行を行っている。 新しい啓蒙法としてピアエデュケーション手法を用いている。この手法では核家族化が進む現代において「仲間意識」に基づいて病気や感染症を自分のこととして身近に感じてもらえるような場を作り、知識を共有しながら子宮頚部感染症や子宮頚部癌の知識を深めることを目的として開催し、アンケート調査を行った。結果では、100%の理解度を得られ、自ら検診を受けてみようと思ったという意見も半数を占めており、若い世代での啓蒙活動に有用である。 また検診に伴った女性の「羞恥心」や「時間的負担」を軽減するために、健常者あるいは病変の経過観察中のボランティアを対象に自宅で採取可能な自己採取を試み、婦人科採取と比較した感想のアンケート調査と解析を行っている。さらに婦人科採取および自己採取検体についてthinlayer標本を用いた細胞診検査、リニアアレイ法によるHPVとその亜型の確認を行い、細胞採取に関しては、同等への細胞量の採取できるが婦人科採取に比較し、細胞診の所見が過小評価される例があり、この理由として病変として診断可能な細胞量が少数であることが考えられる。しかし、HPV検索の結果は高い一致率を示し、自己採取法で形態診断に加え、HPV検査も必須であることが示唆され、自己採取による検診が将来のワクチン接種後の経過観察に有用であると思われ、さらに症例を積み重ねて、詳細な分析を行う予定である。
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