研究課題
【目的】複数課題下で障害物に注意を向けるという能力を強化することで、転倒予防に有用となるのかを検証した。【方法】対象は高齢者157名(84±6歳)である。層化ブロックランダム割り付け法によって、対象者を2群に割り付けた。両群ともに週に1回30分間24週間の標準的運動介を行い、それに加えて各群でそれぞれ障害物回避トレーニングを行った。(MT群)5×5mの領域に(1)から(15)まで番号が記載された旗がランダムに配置され、さらにこの領域内に長さ1mの障害物を10本設置した。対象者には障害物を回避しながら(1)から(15)まで順に通過することが求められた。トレーニングの目的は、複数課題下であっても障害物に注意を向けられる能力を獲得することであるため、障害物の高さおよび色は段階的に目立ちにくくなるように6週毎に変化させた。(ST群)直線歩行路に障害物を10本設置し、それを単純に跨ぐトレーニングを実施した。なお、設置する障害物の高さ・色に関しては、実験群と同様に6週毎に変化させた。【結果】12名が脱落したため、最終的に実験群72名、対照群73名にて解析を行った。10m歩行速度、膝伸展筋力、敏捷性、それに単一課題下障害物接触回数には、それぞれ介入前後において有意な主効果が認められたが(p<0.05),交互作用は認められず群間による差は認められなかった。複数課題下障害物接触回数では、有意な交互作用を認め、MT群でのみ接触回数の減少を認めた。さらに、MT群では有意に転倒発生が有意に少なかった(MT群2.8%,ST群26.0%,IRR=9.37,95%CI=2.26-38.77)。【結語】複数課題下であっても障害物に注意を向けられる能力を獲得することを目的とした運動介入によって、障害物回避能力が向上し、さらにこのようなトレーニングは転倒予防に有用であることが示唆された。
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