研究概要 |
体力や不定愁訴の改善に運動生活習慣が重要な役割を果たしていることが知られている.しかし,これまでの研究では不定愁訴に対する単一項目の関連性のみが議論されており,体力や運動生活習慣の複合的な関連性については議論されていない.加えて,不定愁訴を軽減させるために,体力や運動生活習慣の取組がどの程度効果があるのかをリスク(オッズ比)として数値で示すことは,教育現場にとって有益な情報を与える.したがって,本研究では,小学生における体力及び運動習慣が不定愁訴の有無に及ぼす影響を複合的に検討することと不定愁訴が発現するリスクを定量することを目的とした.対象者は公立小学校5校に通う1年生から6年生の男子2312名,女子2208名,計4520名であった.測定項目は文部科学省新体力テストにおける体力総合評価,運動実施頻度,運動実施時間,朝食摂取状況,睡眠時間,テレビ等視聴時間,そして不定愁訴(体の体調3項目,意欲3項目)であった.また,不定愁訴合計点を基に不定愁訴の有無(従属変数)を判定した.ロジスティック回帰分析の結果,不定愁訴になるリスク(オッズ比)は朝食摂取で0.18倍,体力評価ABCで0.36倍,睡眠時間増加で0.40倍,テレビ等視聴短縮で0.62倍に減少する結果となった.分類2進木解析の結果,13.3%いた不定愁訴有り群は"毎日朝食摂取,かつ,1日30分以上運動,かつ,6時間以上睡眠,かつテレビ等視聴3時間未満"である場合に5.6%まで減少した.不定愁訴の改善には朝食摂取が重要であり,体力及び運動生活習慣の複合的な改善で更に改善する可能性がある.
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