研究概要 |
目的:子どもにおける体力は健康と関連していることが知られている(Ortega et al., 2008).しかし生活習慣と体力の関連やその量反応関係,日本人を対象とした縦断研究による報告は見あたらない.したがって本研究では,生活習慣の変化と体力の変化の関連性を検討することを目的とした. 方法:対象者は11~13歳までの日本人中学生279名(男子145名,女子128名,不明6名)であった.調査は年に1回実施し,同一対象者に対して3年間で合計3回実施した.調査項目は,文部科学省体力・運動能力調査において実施されている項目に準拠し,生活習慣として朝食摂取状況(3件法),睡眠時間(3件法),テレビ等視聴時間(4件法),体力として握力,上体起こし,長座体前屈,反復横とび,20mシャトルランテスト,50m走,立ち幅とび,ハンドボール投げの8項目であった. 結果:x^2検定の結果,朝食摂取状況の悪化と体力合計点の低下に有意差が認められ(x^2(4)=10.40,p<0.05),テレビ等視聴時間の減少と体力合計点の向上に有意差が認められた(x^2(4)=22.89,p<0.05).体力合計点の年次変化を潜在成長曲線モデルで表現し,体力合計点の切片と傾きに対して説明変数(朝食摂取状況,テレビ視聴時間,睡眠時間)を導入したモデル分析の結果は,良好な適合度指標を示した(CFI=1.000,RMSEA=0.000),体力合計点の傾きに有意なパス係数を示した説明変数は朝食摂取状況の変化のみであった(非標準化解:1.13,SE=0.55). 結論:対象者の特徴や分析手法の限界を踏まえた上で,中学生における体力と生活習慣の経年変化の関連性について,次のような結論が得られた.1)朝食摂取状況の悪化は体力合計点の低下と関連する.2)テレビ等視聴時間の減少は体力合計点の向上と関連する.3)朝食摂取状況が改善した集団は,変化しなかった又は悪化した集団と比べ,体力合計点の年間発達量が1.13点高い.
|