研究課題
近年、生活習慣病が最大の問題となっており、その多くが動脈硬化の危険因子となっている。最近になり動脈硬化を簡便にかつ客観的に評価する方法としてbaPW(brachial-ankle pulse wave velocity)が報告されてきている。一方、分子生物学的手法T-RFLP(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism)法を用いて糞便中における細菌のDNAを識別することで細菌叢の実態を全体的に把握する方法が開発されてきている。本研究では、「岩木健康増進プロジェクト」の一環として青森県の地域住民(弘前市岩木地区)を対象に腸内細菌叢の全体像と動脈硬化の指標としてPWVを測定し、両者の関係を検討することを目的とした。対象は「岩木健康増進プロジェクト」に参加した青森県の地域住民(弘前市岩木地区:約1000人)の内、平成21、22年度ともに「岩木健康増進プロジェクト」参加していない人(約100名)を対象とした。方法は糞便採取(約5g):(1)便中の種々の腸内細菌から特定のDNA(16SリボソームRNA遺伝子)を取り出した。(2)DNA合成の始点になる分子(プライマー)に蛍光色素を付けて増幅した後、2種類の制限酵素で切断した。(3)DNAには4種類の塩基が並んでおり、制限酵素は特定の塩基の並びでDNAを切断した。切断されたDNA断片はさまざまな長さ(塩基数)になり、各々のDNA断片の量を蛍光の強さとして測定した。PW測定は血圧脈波検査装置(フォルムPW/ABI、コーリン、東京)を使用した。腸内細菌とbaPWVの関係について検討を行ったが、一定の傾向は認められなかった。腸内細菌と肥満(BMI、体脂肪率)との関係についても65歳未満において男女ともに有意な関連は認めなかった。同様に65歳以上の男性においても有意な差は認めなかった。しかし、65歳以上の女性においてBMIが20未満の群がそれ以外の群に比してOCU332(Lactobacillales)が有意に高値であった。また、体脂肪率が低い群がOCU332の割合が多い傾向がみられた。
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消化器内科
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Hirosaki Medical Journal
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