1.研究の目的 アスリートのオーバートレーニングと腸管機能の低下には密接な関連があるが、腸管機能の低下が骨格筋へ及ぶ影響に関しては、未だ明らかにされていない。また高齢者のサルコペニアの原因が腸管機能の低下と関連している可能性に着目し、腸管機能と骨格筋修復・再生の関係。これらのことから、1.腸管機能低下が骨格筋修復・再生の遅延を招くかどうか、この仮説を検証すること(平成21年度研究計画)、2.高齢者のサルコペニアの原因が、老化による消化器系機能低下に関連している可能性を調べること(平成22年度研究計画)、3.腸管機能と骨格筋修復機能に関与する因子の同定(平成23年度研究計画)を試みた。 2.実験方法 実験はマウスを用いて行った。腸管機能の維持に必要不可欠である腸内細菌を除去したマウスにカルディオトキシンを用いて筋損傷を惹起させた。筋損傷後の修復過程を免疫組織化学染色法にて調べ、損傷脚とコントロール脚の筋重量を測定した。老化マウスの筋修復過程と乳酸菌摂取の効果ついても、抗生剤摂取と同様の方法にて調べた。これらの実験によって得られた門脈採血の血清アルブミン濃度を調べた。 3.結果とまとめ 腸内細菌を除去したマウスは骨格筋の修復・再生が遅延すること、老化マウスの乳酸菌摂取は筋修復過程の遅延が改善されることが示唆された。これらのことから、腸内細菌は腸管機能の維持のみならず骨格筋の修復・再生過程にも重要であり、また老化による腸管機能の低下など、腸管機能の恒常性が壊れた場合、乳酸菌の摂取によって改善効果がみられる可能性が示された。門脈採血の血清アルブミン濃度には変化は見られなかったが、今後、他の骨格筋修復に関与する因子について検討を考えている。
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