背景と目的:食後の中性脂肪を評価する際、脂質負荷試験中に随時採血が必要となり、留置針がよく用いられる。よって、参加者の身体への負担は大きく、より侵襲度の低い測定法が必要と考えられる。また、多くの先行研究では、活動的な若年健常者を対象として検討していたため、有酸素運動における食後中性脂肪濃度上昇の抑制効果を一般に当てはめることは難しいと考えられる。本研究は中年の肥満男性を対象に、身体活動指針に沿った一過性の自転車漕ぎ運動が食後毛細血管中性脂肪濃度に及ぼす影響について、簡易測定器を用い検討することを目的とした。対象・方法:10名の中年の肥満男性(年齢46±2歳、BMI 31.6±1.0kg/m2)は連続した2日間の工程を1週間の間隔を空け2試行(安静試行と運動試行)に参加した。実験一日目、安静試行では参加者は運動を行わず安静を保ち、運動試行では最大心拍数の60%の強度で30分間連続の自転車漕ぎ運動を行った。各試行とも実験2日目、参加者は10時間の空腹の後、中脂肪食を朝食に取り、その後安静を6時間保った。毛細血管血を実験2日目の空腹時、食後2時間後、食後4時間後、食後6時間後に採取した。結果:運動試行において、安静試行と比較し、食後6時間中の毛細血管中性脂肪濃度は低値を示した。結論:中年の肥満男性において、身体活動指針が推奨する最低限の運動量での一過性の30分の自転車漕ぎ運動は、食後毛細血管中性脂肪濃度を低減させることを明らかにした。食後の中性脂肪濃度は健常者に比べ肥満者では高中性脂肪の状態が持続することから考えると、本研究における一過性の運動における効果は肥満者のための運動実践として重要だと考えられる。
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